Global Now
今、私たちはどのような社会に生きているのか。
世界中で起きている出来事をシリーズでお伝えします。
一辺6メートルの立方体―これまで人類が生産してきたすべての白金の量約4,000トンを一つにまとめても、これくらいの大きさにしかならないという。白金は貴重で希少な金属だ。
現存する最古の白金製品は、パリ・ルーヴル美術館にある「テーベの小箱」とされる。古代エジプトの女性神官シュペヌペットの墓から発掘されたこの小箱に、純度が高い白金原石が埋まっている。1,700度を超える融点を持つ白金は、近代まで精錬・加工技術がなく、世に出回らなかったため、加工しやすい金の方が価値が高かった。
18世紀後半、スペインの海軍将校がコロンビアのピント川で白金を発見し、スペイン語で銀を表す「Plata(プラタ)」にちなんで「プラチナ・デル・ピント(ピント川のちっぽけな銀)」と名づけた。これが白金をプラチナと呼ぶきっかけとなった。当時は砂金採りを阻む厄介者として、砂に混じる白金は廃棄されるなど邪険に扱われたという。
それが今では金や銀に劣らぬ高級金属として宝飾品などに人気が高い。さらには工業用にも幅広く活用され、環境やハイテク分野において、需要は高まる一方だ。
金属の王様とも呼ばれる白金の、未来への可能性はまばゆく光りかがやく。
地質研究者曰く、プラチナは「宇宙由来の鉱物」とされています。白金やパラジウムなどのPGM(Platinum Group Metals)は、車の排ガスの有害物質を浄化する自動車用触媒や石油精製触媒などの環境技術に不可欠です。電子産業、燃料電池などにも活用されています。三菱商事は昨年、北米最大のPGM生産者から、カナダ・オンタリオ州マラソンPGM鉱山プロジェクトの権益を25%取得しました。年間約20万オンスのパラジウムや白金が採掘されるこのプロジェクトを通じて、PGMの安定供給に貢献していきます。
2013年2月17日 朝日新聞「GLOBE」掲載 |