サプライチェーン・マネジメント : 体制・システム
体制
当社のサプライチェーン・マネジメントに係る取り組みは、コーポレート担当役員(CSEO)が管掌し、サステナビリティ部が方針・施策を企画・立案の上、年2回をめどにサステナビリティ委員会で討議後、社長室会、取締役会において付議・報告される体制としています。
所管役員 | 小林 健司(常務執行役員、コーポレート担当役員(CSEO)) |
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審議機関 (経営意思決定機関である社長室会の下部委員会) | サステナビリティ委員会 委員会で審議されたサプライチェーン・マネジメントに関わる重要事項は、社長室会にて機関決定され、所定の基準に基づき、取締役会に付議・報告されています。 |
事務局 | サステナビリティ部 |
リスク管理・評価
当社サプライチェーン上の人権・環境デューデリジェンス
(「持続可能なサプライチェーン調査」)
当社では、持続可能なサプライチェーン・マネジメントの観点から、2016年度および2020年度に外部有識者やコンサルタントと協業し、当社が取り扱う商材の中で環境・社会性面のリスクが高い商材を「調査対象商材」として特定し、これら商材のサプライヤーを対象として、当社の「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」の遵守状況を調査するサプライチェーン上の人権・環境デューデリジェンス(「持続可能なサプライチェーン調査」)を毎年度1回実施しています。
調査対象商材の特定に当たっては、当社グループの取り扱う全ての商材につき、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や、その他の持続可能なサプライチェーン・マネジメントに関する国際規範を参照の上、当社のステークホルダーに与える可能性がある負の影響の1.深刻度(規模、範囲、是正困難度)と2.発生可能性(調達国別の状況、業界・地域の状況)などの観点から優先順位付けを行いました。調査対象商材のサプライヤーに回答いただくアンケート調査の内容は、持続可能なサプライチェーン行動ガイドラインの内容に基づき規範の有無や法令遵守、従業員に対する強制労働・児童労働や差別の禁止、従業員の団結権の尊重、環境保全、情報開示などを中心に、各サプライヤーが扱う商品特有の課題やリスクを加味した内容としています。また、人権・環境デューデリジェンスの実効性を担保すべく、人権・環境デューデリジェンスの対象となるサプライヤーから回答いただき、対処・対応が必要となる課題については是正することを目指すとともに、各サプライヤーの回答結果を基に、課題を抱える、または対処を要するサプライヤーを特定し、その後の追加調査や現地視察の要否を検討・判断する仕組みを採用しています。なお、アンケート調査に関するサプライヤーの利便性とアクセシビリティの向上を目的として、当社Webシステムを構築し、同システムを通じて調査を実施しています。
当社は、2024年4月に、約50カ国・地域のサプライヤー870社を対象として年次アンケート調査(2023年度実績)を実施し、対処・対応が必要な課題については是正するべく努めています。また、一部サプライヤーの経営者および従業員へのインタビューを実施し、対話を通じた実態把握や是正に向けた情報交換をしました。

①対象商品を決定
当社グループの取り扱い商材のうち、環境・社会性面のリスクの高い商材を、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や、その他の持続可能なサプライチェーン・マネジメントに関する国際規範を参照の上、当社のステークホルダーに与える可能性がある負の影響の1.深刻度(規模、範囲、是正困難度)と2.発生可能性(調達国別の状況、業界・地域の状況)などの観点から優先順位付けを行いました。
なお、今後事業活動を通じて重大な環境・社会性面リスクが顕在化した際には、上記のプロセスを経ずに対象商材を調査対象とすることを検討します。

②優先順位付けを行った商材のサプライヤーを調査対象先として決定
③調査対象サプライヤーに対しアンケート調査を実施
調査対象サプライヤー数および調査結果の詳細は、以下の通りです。また、一部のサプライヤーの事業現場へ訪問し、経営陣および従業員へインタビューを実施しました。なお、訪問の対象となるサプライヤーは、アンケート調査の結果、ILO中核的労働基準などの4課題の設問の一部の回答が不十分な先や、ベストプラクティスを実施されている先から選定しています。
【調査のフロー図】

調査対象サプライヤー数に関するデータは、以下リンク先をご参照ください。
持続可能なサプライチェーン調査の実施状況
当社の持続可能なサプライチェーン調査の対象となっている商材・事業を取り扱うサプライヤーの主な所在国は、下図の通りです。

調査結果に関するデータは、以下リンク先をご参照ください。
サプライヤーとのコミュニケーション/エンゲージメント
新規サプライヤー
新規サプライヤーに対しては、「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」をWebサイト上で公開して共有しています。また当社の契約書※において、サプライヤーの皆さまに「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」を遵守することをお約束いただいています。サプライヤーの皆さまが本ガイドラインに違反したなどの場合には、サプライヤーの皆さまにかかる是正を請求することができ、是正がされないなどの場合には、契約を解除することができるとしています。また、本ガイドラインへの遵守状況を把握するため、「持続可能なサプライチェーン調査」を実施するなど、活動状況の確認を実施しています。
- ※売買契約裏面約款、委託販売契約、輸出委託販売契約、長期売買契約 など。
既存サプライヤー
既存サプライヤーに対しても「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」への賛同を定期的に取り付けるとともに、その遵守状況を継続的に把握するため、定期的なアンケート調査を実施しています。また、必要と判断される場合には、サプライヤーを訪問し活動状況の確認を行っています。なお、現在の取り組みの再点検を目的として、改めて本ガイドラインに則して、環境・社会性面のリスクが高い既存サプライヤーの見直しを不断に実施しています。今後は、より実効的なサプライヤー調査方法の確立を目指し、再点検の結果をサプライチェーン・マネジメントに組み込みます。
2023年度は当社グループ会社(株)エム・シー・フーズの紅茶サプライヤーであるスリランカのMabroc社を訪問し、同社のサステナビリティに係る取り組み状況について、同社グループ会社である紅茶農園の視察や従業員へのインタビューなどを通じて、確認と評価を行いました。
当社は、2016年にもMarboc社を訪問しています。その当時から、Mabroc社および、グループ会社である紅茶農園が、環境・社会性面の取り組みを経営の根幹に据えた企業であることを確認していました。今回の訪問では、2016年当時よりさらに取り組みが深化していることを確認しました。
象徴的な取り組みの一つが、農園の現場管理者への女性登用です。歴史的・文化的な背景から約200年にわたって茶葉を手摘みするのは女性で、それら手摘みの女性を管理する現場管理者は男性という構造が続いていましたが、現場管理者への女性登用が始まっています。今回の訪問で女性管理者にインタビューし、現場管理者への登用は大変光栄であり、代々紅茶手摘みに従事している家族も喜んでいるという声を聞くことができました。
他にも、従業員への居住施設の提供、病院施設の提供、収穫作業中に子どもを預けられる保育園の開設など、農園で働く従業員の生活と共存共栄しながら事業を行っていることを確認しました。
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インタビューの様子 -
茶葉の手摘みの様子 -
保育園の様子
当社は、今後も当社グループ各社と連携の上、サプライヤーの皆さまと共に、持続可能なサプライチェーンの確保に取り組んでいきます。
追加調査や現地視察を通じて、本ガイドラインに照らし、是正または改善すべき事項が確認された場合には、対象となるサプライヤーに是正・改善措置を求めるとともに、必要に応じて、指導・支援を行います。継続的な指導・支援を行っても、是正が困難と判断された場合には、当該サプライヤーとの取引を見直します。
さらに、2024年8月・9月には、当社の持続可能なサプライチェーン調査の対象となっている世界各国のサプライヤーに対して、以下の通り「ビジネスと人権」セミナーを開催し、サプライヤーとのコミュニケーション/エンゲージメントの強化を行いました。
サプライヤー・グループ会社向けの「ビジネスと人権」セミナー
本セミナーはウェビナーの形で2回開催(英語・日本語で1回ずつ)し、世界各国のサプライヤー・グループ会社から合計150名の参加がありました。外部より講師を招き、国際動向の背景等も踏まえながら、人権デューデリジェンスの取り組みに関する考え方について説明いただきました。当社からは2024年2月に制定した当社の人権方針に関し、制定の背景や当社の取り組みについて説明するとともに、当社事業部、サプライヤーによるグッドプラクティクスを共有しました。今後も連結ベースでの人権・環境デューデリジェンスの強化を行っていきます。
④当年度取り組みをレビューし、次年度取り組み方針を企画
当年度の人権・環境デューデリジェンスに係る取り組みをレビューし、サステナビリティアドバイザリーコミッティー、各営業グループのグループサステナビリティ責任者・グループサステナビリティマネージャーなどの社内外ステークホルダーとの協議を経て、次年度の取り組み方針をサステナビリティ委員会で討議後、社長室会、取締役会において付議・報告しています。
また、サプライチェーン・マネジメントに関する方針は、当社ステークホルダーとの対話状況を踏まえ、随時見直しを検討しています。当社サプライチェーン上の人権・環境デューデリジェンスを通じたサプライヤーとのコミュニケーションは、サプライヤーに当社のサステナビリティに関する考え方への理解を深めていただくきっかけとなっており、今後も積極・継続的に取り組んでいきます。
見直しの契機となった サプライチェーン・マネジメント施策 | 詳細 |
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サプライチェーン上の人権・環境デューデリジェンス | 購買方針の見直し(サプライヤーとの契約に「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」の遵守を求めるなどの条項を盛り込む) |
紛争鉱物への対応
2010年7月に成立した米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)では、米国上場企業は、製品に使用されている「紛争鉱物※」が、紛争多発地域であり非人道的行為が報告されているコンゴ民主共和国やその周辺国で産出されたものか否かにつき合理的な調査を踏まえ、開示することが求められています。
当社は米国上場企業ではないため、同法における直接の報告・開示義務は負いませんが、企業活動における社会的責任を果たすため、錫、タンタル、タングステン、金のサプライヤーに対し、紛争鉱物調達に関するポリシーやガイドラインを設定しているか、また、供給商品がコンゴ民主共和国やその周辺国の武装グループの資金源となっていないことなどを確認し、武装勢力による人権侵害や紛争へ加担しないようにしています。
- ※同法では、錫、タンタル、タングステン、金の4つが「紛争鉱物」に指定されています。
調査対象サプライヤー数に関するデータは、以下リンク先をご参照ください。
投融資審査
当社では、事業におけるサステナビリティ推進を実現すべく、サステナビリティ部長が投融資委員会のメンバーを務め、全社的な投融資審議プロセスで環境・社会性面に与える影響も踏まえた意思決定が行われる審査体制を整備しています。投融資案件の審査に際しては、経済的側面だけでなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点も重要視して、総合的に審議・検討しています。サプライチェーン・マネジメントの観点では、投資先のみならず、投資先の取引先(サプライチェーン)における人権配慮の状況に関するデューデリジェンスなどの精査を行い、審議・検討に役立てています。