気候変動 : 方針・基本的な考え方

ミッション

気候変動による影響は年々深刻さを増しており、環境・社会および人々の生活・企業活動に大きな影響を及ぼすようになっています。
同状況下、脱炭素社会の実現を通じた気温上昇の抑制という人類共通の課題に対する取り組みが世界中で加速し、大きなうねりとなっています。2015年のCOP21にて196カ国によって採択された「パリ協定」は、温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出削減によって世界の平均気温上昇を今世紀末までに産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを世界共通の目標として掲げました。この目標達成のためには、現在のエネルギー需給構造の大改革が必要であり、世界全体で官民による巨額の脱炭素関連投資が求められる状況となっています。
すなわち国・政府だけでなく、民間セクターが果たすべき役割への期待が大きくなっており、企業による事業を通じた脱炭素社会につながる取り組みが必要となっています。また、TCFD※1やISSB※2などを起点として、投資家などのステークホルダーが企業の気候変動関連リスク・機会を適切に把握・評価できるよう情報開示を促す動きが加速しています。この流れを受け、機関投資家イニシアティブであるClimate Action 100+や日本で立ち上げられたTCFDコンソーシアムなどに代表されるような、企業と投資家などのステークホルダーとの気候変動に関する対話の機会が広がっています。
三菱商事は創業以来の企業理念である「三綱領」をよりどころに、公正で健全な事業活動を推進しています。また三綱領の理念を基に制定した「三菱商事環境憲章」や「三菱商事社会憲章」にのっとって事業を展開しており、グローバルな総合商社として企業価値向上を図りながら、経済価値・社会価値・環境価値の三価値同時実現を通じた社会の持続的発展に貢献していくことを目指しています。
当社は、気候変動は重大なリスクであると同時に、イノベーションや新規事業の実現を通じ新たな事業機会をもたらすものと考えており、「脱炭素社会への貢献」をマテリアリティの一つに掲げ、持続可能な成長を目指す上での対処・挑戦すべき重要な経営課題の一つとしています。
脱炭素社会への移行に当たっては、国・地域ごとに異なる実情(エネルギー・電力構成、地理的な条件・制約、経済発展の段階や人口規模など)を踏まえた具体的な対応方針を立案し、一つ一つ着実に実行していく必要があります。当社は世界中に広がる拠点と約1,700の連結事業会社を通じて、日々、世界各地のさまざまなステークホルダーと幅広く協働しながらビジネスを展開しています。このネットワークを活用して個々の課題・ニーズを的確に把握し、社内外の知恵をつなげた事業により解決策を実現していくというプロセスを通じ、脱炭素社会の実現を目指していきます。

  • ※1
    金融安定理事会が立ち上げた気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)。2017年6月に投資家が適切な投資判断を行えるよう、気候関連財務情報の開示ガイドラインを公表。当社は2018年にTCFDへの賛同を表明。当社のサステナビリティ部長は、2018年から2021年までTCFDメンバーを、またそれ以降はTCFDコンソーシアムの企画委員を務めており、TCFDの浸透・取り組みをサポートしています。
  • ※2
    2021年11月3日にIFRS財団評議員会によって設立された、IFRSサステナビリティ基準を設定するための国際サステナビリティ基準委員会(International Sustainability Standards Board:ISSB)。

カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組み

当社は、2021年10月に「カーボンニュートラル社会へのロードマップ(ロードマップ)PDFファイルを開きます」を発表し、2050年のGHG排出量ネットゼロを目標とすることを宣言しました。また、資源・エネルギーをはじめとするさまざまな事業に携わってきた当事者として、エネルギーの安定供給責任を全うしつつ、カーボンニュートラル社会の実現に向けて脱炭素との両立を目指しています。

ロードマップ3つのポイント

  • GHG削減目標
    2030年度半減(2020年度比)・2050年ネットゼロ
  • 2030年度までに2兆円規模のEnergy Transformation(EX)関連投資
  • EX・Digital Transformation(DX)一体推進による「新たな未来創造」

石炭火力事業取り組み方針

当社は「カーボンニュートラル社会へのロードマップ PDFファイルを開きます」で発表したGHG排出量の削減目標や1.5℃シナリオ分析を踏まえた事業戦略に基づいて、燃料転換など既存火力資産の水素・アンモニア混焼でのオペレーション上のGHG削減と火力資産のダイベストメントを中心とした資産の入れ替えを進めており、石炭火力事業については以下の取り組み方針を策定しています。

<石炭火力発電事業(IPP)>

  • 2024年3月末時点の石炭火力発電事業(当社が発電事業者として電気を供給する役割を担う石炭火力発電事業)の当社持分容量は、開発中・建設中案件を含め約96万kWです(同時点の当社持分容量全体における約12%)。
  • 受注済みのベトナム/ブンアン2案件を最後として今後新規の石炭火力発電事業は手掛けず、段階的に撤退することで、2030年までに2020年比で持分容量を3分の1程度まで削減し、2050年までに完全撤退する方針です。また、燃料転換などによる火力発電事業全般での低炭素化にも取り組みます。2050年までには、二酸化炭素を排出しないゼロエミッション火力への切り替えによる火力発電事業の脱炭素化の実現と再生可能エネルギー事業のさらなる拡大により、当社発電事業における非化石比率100%を目指す方針です。

<石炭火力発電所建設工事請負(EPC)>

  • 受注済みのベトナム/クアンチャック案件を最後として、今後新規の石炭火力発電所建設工事請負には取り組みません。ただし、当社の工事請負により建設した石炭火力発電設備のアフターサービスについては、当社が発電事業者に対して契約上の履行義務を負う場合や、発電事業者または発電設備メーカーから要請された場合に限り取り組む方針です。
  • なお、既存の石炭火力発電設備の環境負荷を低減するための追加工事については、実効性を見極めながら、低・脱炭素社会につながる取り組みとして継続します。