サプライチェーン・マネジメント : 取り組み
取り組み
従業員に対する研修
三菱商事では、全社員が購買や販売などのトレーディング業務に携わる可能性があります。そのため、新入社員研修などの階層別研修や、貿易実務に係る研修などの社内研修において、サプライチェーン上における人権の尊重を含めた当社の理念、ならびに関連ガイドラインの説明をすることで、全社員が購買担当者として理解を深めるようにしています。
セミナーやワークショップ等を通じたエンゲージメント
ビジネスと人権セミナー
ビジネスと人権セミナー
当社では、毎年グループ会社やサプライヤーを対象にビジネスと人権セミナーを開催しています(英語・日本語で1回ずつ)。2025年度は、国内外のサプライヤー・グループ会社から広く参加者を募り、合計185名の参加がありました。今回は、人権方針の制定と救済の実務に焦点を当て、社外より招いた講師との対談を交えて、各種取り組みの重要性や、具体的な対応・留意点等を共有しました。
また、人権方針の制定や救済の実務に特に関心の高いグループ会社やサプライヤーとは、ビジネスと人権セミナーに加え、個別ワークショップを開催し、個社の事業を前提に意見交換をしました。
今後も、サプライチェーン調査とエンゲージメントを組み合わせながら当社事業に係る人権・環境デューデリジェンスに取り組んでいきます。
サプライヤー訪問
2025年度は、当社サステナビリティ部が、当社子会社の株式会社MCアグリアライアンスが加工を委託している日新化工株式会社(製菓用チョコレート製造)の工場を訪問し、同社の経営陣や製造現場のスタッフと、チョコレート産業のサプライチェーンにおけるサステナビリティ課題について意見交換を実施し、人権方針の策定・浸透やグリーバンスメカニズムの運用等幅広い観点から議論を深めました。
今回の訪問では、チョコレート産業が抱える「サプライチェーン全体における労働者の権利尊重」について協議しました。人権方針は単に制定するだけでなく、企業理念と結び付け、すべての従業員が「自分事」として捉える必要があることを再確認しました。その上で、人権方針を社内外へ浸透させるための施策について意見を交わし、経営トップによるコミットメントの重要性や、企業活動におけるマテリアリティ(重要課題)の明確化が鍵であることを確認しました。
また、グリーバンスメカニズムとしての役割を担う「お客様相談窓口」についても議論しました。事案を認知した際に迅速かつ適切に対処するためには、経営トップへスムーズに情報が届く「有事の報告ライン」と、担当者をあらかじめ明確にしておくことが不可欠です。
今回の対話を通じて、同社が取り組むべき優先順位や実行可能な改善方法について理解を深めることができました。サステナビリティに配慮したチョコレートを製造し、これまでの製菓用チョコレート製造の枠を超え、消費者向けブランド展開を進める同社は、チョコレート産業の課題を、原料調達を担う輸出入業者のみならず、自社の課題として主体的に捉えていました。この姿勢は、他の商材サプライヤーとのエンゲージメントにおいても好事例として共有していきたいと考えています。
当社は今後もサプライヤーの皆さまと共に、実効性のある人権尊重と持続可能なサプライチェーンの確保に取り組んでいきます。
-

対話 -

工場内設備の視察
外部との協働
サプライチェーンに関連するイニシアチブへの参画
当社は、サプライチェーンに関連するイニシアチブへの参画を通じて、持続可能なサプライチェーンの確保を行っています。
Sedex
Supplier Ethical Data Exchange(Sedex)は企業のESGの成果を継続的に改善するためのデータに基づく洞察、ツール、サービスを提供しているグローバルなプラットフォームです。当社子会社であるMCアグリアライアンス、Asia Modified Starch社、日本食品化工は食品、製菓原料、飲料原料などの取引について、本プラットフォームに参加し、サプライチェーンにおいて、取引先と人権の尊重や品質保証などについて協働しています。
EcoVadis
EcoVadisは、包括的な企業の社会的責任(CSR)評価サービスを提供しているグローバルなクラウドベースのSaaSプラットフォームです。当社子会社である三菱商事ケミカルは2022年から、本プラットフォームに参画しており、サプライチェーンにおいて取引先と人権の尊重や品質保証などについて協働しています。
RTRS
責任ある大豆に関する円卓会議(Round Table on Responsible Soy Association:RTRS)は責任ある大豆の生産や流通に関する認証などを行っている国際イニシアチブです。当社子会社のAgrex do Brasil社は、ブラジルのマラニョン州の農地において初めてRTRS認証を取得しました。RTRS認証取得などの活動を通じて、同社は、土壌管理・保護の効率化、水管理の改善、従業員のモチベーション向上、近隣コミュニティとの関係強化などのさまざまな取り組みを行っています。
ASC
水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council:ASC)は責任ある養殖水産物のための認証とラベリング制度の運営などを行う国際NPOです。当社子会社のCermaq社は、2015年にカナダで初めて複数のサーモン養殖場においてASC認証を受けています。
責任ある水産物調達ラウンドテーブル
責任ある水産物調達ラウンドテーブル(The Japan Responsible Seafood Roundtable:JRSR)は、日本国内の水産物関連企業が参加し、個社の努力だけでは解決が難しい水産物調達の課題に対し、企業間の協働による解決を目指しています。当社はJRSRに参加し、持続可能な水産物の取り扱い拡大や透明性あるトレーサビリティの確保を目指すべく、企業間でも協働していきます。
FSC®
森林管理協議会(Forest Stewardship Council®:FSC)は、環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を理念としています。当社はFSC CoC認証(加工・流通過程の認証)を取得して、人権・生物多様性の維持・自然資本の保全などに配慮して生産された木材製品を取り扱っています。
Cermaqにおける取り組み
当社子会社のCermaq社は、事業の操業が環境や社会に与える影響について高い水準を確保することを公約しています。同社は、当社の持続可能なサプライチェーン行動ガイドラインにおいて定める項目を考慮し、サプライヤー行動規範を制定しています。責任あるサプライチェーン行動を確保すべく定められた同社のサプライヤー行動規範には、同社の全サプライヤーが遵守すべき最低基準が明記されています。同社は、同社のサプライヤーに対して、彼らのサプライヤーや下請け業者にも同様の基準遵守を求めています。また、同社は、全サプライヤーに対して、国内法・人権・労働者の権利・安全衛生・腐敗防止・環境・食の品質および安全性・マネジメントシステム・業務の遂行において要件遵守を求めています。環境分野においては、サプライヤーの操業が人々の安全衛生を守る一方、コミュニティ・環境・自然資源に与える負の影響を最小限に抑えることを求めています。負の影響の中には、汚染・限られた資源の使用・森林破壊・化学物質や他の物質の大気中や海、また土の中への排出によって生じる環境負荷が含まれます。養殖における化学物質の使用削減など、リスクを最小限に抑えるために、サプライヤーは操業が環境に及ぼす影響を特定・モニタリング・コントロールすることが求められています。Cermaq社は、基本的人権および適正な労働条件に関するサプライチェーンの遵守について報告しています。

三菱商事パッケージングにおける取り組み
当社子会社の三菱商事パッケージング株式会社では、人権・労働問題・地球環境などへの取り組みの方針となる「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」を制定しています。同社の基本的な考え方をサプライヤー・協力会社へお伝えし、賛同と理解を得た上で、実践いただくことを要請していきます。
また、同社は、FSC®認証製品(段ボール、包装用紙など)を取り扱っており、第三者認証機関による審査が要件であるこの認証取得の有無をもって、サプライヤーである製紙会社・加工会社の環境・社会性面のリスクを把握しています。同社としてもFSC CoC認証を取得し、同認証のルールにのっとりFSC認証製品の仕入れ・保管・販売を適切に行っています。
- ※商標ライセンス番号:FSC®-C007960
ローソンにおける取り組み
当社関連会社である株式会社ローソンでは、店内入れたてコーヒーサービス「MACHI café(マチカフェ)」で、環境・労働者に配慮したレインフォレスト・アライアンス※1認証農園産のコーヒー豆のみ※2を使用しています。さらに、レインフォレスト・アライアンスと認証商品を取り扱う企業が協働で立ち上げた「レインフォレスト・アライアンスコンソーシアム」に参画してリツイートキャンペーンを実施するなど、普及・啓発活動を行っています。
- ※1レインフォレスト・アライアンスは、1987年に設立された国際的な非営利の環境保護団体です。環境保全や農園労働者の生活向上など、厳しい基準を満たした農園にレインフォレスト・アライアンス認証が与えられます。
- ※2モカブレンドは対象外です。
Olamにおける取り組み
当社関連会社のOlam社では、「世界の農業とフードシステムを創造」(“Re-imagining Global Agriculture & Food System”)を企業理念に掲げ、事業の成長は、環境・社会への適切な価値提供を通じて達成されるものと定義し、「農家の生活水準向上」「コミュニティのウェルビーイング向上」「人々が生きる世界の再生」という3つの成果の実現を目指しています。この目標を達成するために10の重点エリアを選定し、12のSDGs目標にインパクトを与えるフレームワークを構築するというアプローチを行っています。2018年には、顧客と調達元を直接つなぎ、包括的なサステナビリティソリューションを提供するデジタルプラットフォーム「AtSource」を開発し、世界中の小規模農家を対象に展開しています。150社超に及ぶ顧客は、このツールを通じて調達元のプロファイルだけでなく、購入した原料にひも付くCO2排出量などの環境指数、農家収量など含めた社会指数など合計約350指数を把握することができ、特定分野にフォーカスした独自のサステナブルプロジェクトを構成することができます。なお、当該プラットフォームを活用したOlam社のサステナビリティに対する取り組みは、2020年以降、2023年まで継続的にReuters社のResponsible Business Awardを受賞しており、2023年には上記CO2排出量の可視化や削減に向けた取り組みを示すCarbon Scenario PlannerがFood ingredients EuropeによるInnovation Awardとしても表彰されました。
また、同社Sunny Verghese CEOが “SGDs 12.3”(2030年までの食品廃棄物半減が主目標)を達成するために設立された国連・各政府・企業・民間団体などの幹部で構成される団体“Champions 12.3”のCo-chairに2020年から就任していることからも同社のサステナビリティに関する取り組みが世界的に高い評価を得ていることがうかがえます。
上述のAtSourceがGlobal Coffee Platform(コーヒーサプライチェーンにおけるサステナビリティの枠組みを定め、生産国から消費国のあらゆる企業が加盟する業界最大級の団体)において同団体の正式な基準の一つとして認定されるなど、社外からも高い評価を得ています。各取り組みの詳細については、以下同社Webサイトをご参照ください。
過去の視察レポート
スリランカ 紅茶農園
2023年度は、当社グループ会社の株式会社エム・シー・フーズの紅茶サプライヤーであるスリランカのMabroc社を訪問し、同社のサステナビリティに係る取り組み状況について、同社グループ会社である紅茶農園の視察や従業員へのインタビューなどを通じて、確認と評価を行いました。
当社は、2016年にもMabroc社を訪問しています。その当時から、Mabroc社および、グループ会社である紅茶農園が、環境・社会性面の取り組みを経営の根幹に据えた企業であることを確認していました。今回の訪問では、2016年当時よりさらに取り組みが深化していることを確認しました。
他にも、従業員への居住施設の提供、病院施設の提供、収穫作業中に子どもを預けられる保育園の開設など、農園で働く従業員の生活と共存共栄しながら事業を行っていることを確認しました。


日本 食肉加工会社
2022年度は、当社子会社のフードリンク株式会社の鶏肉サプライヤーである国内食肉加工会社を訪問し、現地視察を実施しました。今回の視察は外部監査機関であるDNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社からの監査員同行の下で実施し、同社のサステナビリティに係る取り組み状況について、工場の視察や経営陣・従業員へのインタビュー等を通じて、確認と評価を行いました。
現地視察における評価は、当社の「持続可能なサプライチェーン行動ガイドライン」に基づくチェックリストを用いて実施し、主にサステナビリティマネジメントの妥当性および現場でのサステナビリティマネジメント実践の妥当性等の確認を行いました。評価の結果、人事・労務についてはおおむね妥当な管理が行われていると判断されました。ただし、一部、方針・手順等が定められていない項目も見受けられたため、改善の必要性について指摘しました。また、労働安全衛生や環境に関しては、文書化が一部しか行われておらず、管理も属人的な傾向が見受けられました。従業員に対する教育・訓練は一定程度行われており、事故等は発生していないものの、今後の方針・手順等の制定と周知徹底が望まれる旨を申し入れました。
詳細は添付レポートをご参照ください。

日本 美津島町漁業共同組合
2021年度は、当社子会社の東洋冷蔵(株)が国産マグロを買い付けている長崎県対馬市の漁協である美津島町漁業共同組合の経営陣および従業員に、当社のサステナビリティに係る取り組み等を紹介する説明会およびインタビューを、オンラインで実施しました※。
説明会では、サステナビリティに関する外部環境に加え、当社のサステナビリティの取り組み(人権に関する基本的な考え方、持続可能なサプライチェーンの確保を重要な経営上の課題の一つとして特定して事業活動に取り組んでいること)等を説明し、サステナビリティに係る重要性や当社の取り組み内容についての理解を深めていただきました。
オンラインインタビューでは、持続可能な漁業につながる活動として海の漂流物の回収等の活動を行っていること、風通しの良い職場環境に努めていることから人権侵害等の問題が発生していないこと、労働安全衛生の懸念がある作業に従事する従業員には適切な研修を受講させるのみならず従業員の業務量に偏りがないように人材配置を行っていることなどを確認しました。
なお、インタビューを通じて上述の環境や社会に配慮する社内の方針が明文化されていないことを確認したため、当該方針を周知徹底し、サステナビリティに係る取り組みを深化するべく、当該方針の明文化を依頼しました。
当社は、今後も当社グループ各社と連携の上、サプライヤーの皆さまと共に、持続可能なサプライチェーンの確保に取り組んでいきます。

- ※新型コロナウイルス感染症の状況から、従来のサプライヤーの事業現場訪問は難しかったことを受け、オンラインで実施しました。
2020年度以前の現地視察
| 年度 | 業種・商材・対象先 | 国 |
|---|---|---|
| 2020年度 | アパレル製品 縫製工場 | 日本 |
| 2019年度 | 新型コロナウイルス感染症情勢により未実施 | ー |
| 2018年度 | 鶏肉および鶏肉加工品 工場 | タイ |
| 2017年度 | アパレル製品 縫製工場 水産物 養殖・加工場 | ベトナム |
| 2016年度 | コーヒー農園、精選所 | コロンビア |
| 2015年度 | 紅茶農園 | スリランカ |
| 2014年度 | コーヒー農園 | ブラジル |
| 2013年度 | 稚エビ生産販売・エビ加工工場 | タイ |


